「進化・成長」の陰に 記憶と集合的無意識
人間の身体を解剖学的に見ると、人体の器官はある部分は進化を遂げているにもかかわらず、
ある部分は非常に古いまま残っていると言われています。
胎児は母体の子宮内で10か月足らずの間に受精卵としてのたった一つの細胞から
分裂、分化を繰り返して60兆ともいわれる数の細胞を宿す人間へと進化します。
しかも、その過程は人類が5億年もの時間をかけて進化した神秘の軌跡と言われるものです。
受精卵は、
稚魚から原始魚類、古代魚類の形を経て
両生類から爬虫類へと移り行き、
最終的に哺乳類に属する人間の姿にまで成長した後、
母子分離し一人の人間としてこの世界に生み出されます。
人間以前の、さらには哺乳類以前の段階を経て今に至る人体にとっては、
それらの時代の器官が残っていたとしても不思議ではない訳です。
脳に関して言えば、一番新しく発達したのが大脳で、
古い部分には爬虫類と共通するような脳があるとも言われています。
心もそれと同様に、無意識の部分には非常に古いものが残されていて、
その部分に通じるものこそが集合的無意識なのだと、ユングは言います。
この度の新種コロナウィルスもまた、人体に侵入し共存しつつ進化をし、
人類は人類として体験を無意識に落とし込みながら成長して行くことでしょう。
物理学者が分子、素粒子、波動などについて研究するように、
生物学者が遺伝子やウィルスなどについて研究するように、
有意識、無意識、集合的無意識とその構造や働きを研究することが、
心理学者の課題であろう、ともユングは記しています。
心理学の理論的背景を基盤に、
変化し続ける環境・時代性など外界からの刺激を受け、
それによって引き起こされる人間の実際的行動化を観察し、
関り方の有りようを丁寧に観ていくことが、
心理カウンセラーの仕事であろうと考えています。